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続:秋の味覚と焼き芋と

「一秒で来なかったら、あんたの奢りなんだからねー」

とっぷりと暮れる秋の夕暮れ、焼き芋屋台のすぐ横でこちらに手を振るハルヒを目指して俺は一気に坂を駆け下りる。
「おじさん、おーっきいのをひとつね!」
ゼイゼイと息をつく俺の横でハルヒは屋台の主に注文を出す。
「あいよっ、任せとけ」
焼き芋屋のおやじは手際良く焼けた石の中からいい具合に焦げの付いた大きめの焼き芋を掻き出し紙袋に入れる。
目をキラキラさせながらその袋を受け取ったハルヒは、当たり前のように俺に向かってお会計を言いつけた。
「一秒で来られなかったんだからあんたの奢りなんだからね」
「へいへい」
まったく、どうやったらあの距離を一秒で移動できるのだ。
できもしないことを条件に「奢れ」とはなんとも素直ではない。横暴だ。
しかし、この態度尊大な団長様に「キョン、焼き芋食べたいな~。奢りなさいよ!」と言われた所でなんだか背中がむずむずと痒くなる自信も充分にある。
と言うことはこれくらいがちょうど良いのだろうか。
そんな事を頭の中でぶつぶつと考えながら俺は焼き芋一本分のお代に十分な代金を財布から出して屋台主に手渡す。
「毎度っ!またよろしくな!」
おつりと屋台主のお礼を受け取り、続く坂道を二人並んで歩く。

「まったく、あんな距離でそんなに息が荒くなってるなんてSOS団員失格よ」
まったくはこっちの弁だ。どこぞの誰かさんが一秒で来いとか言ったせいだろ、と、のど元まで出かけた言葉を飲み込んで俺はハルヒの腕の中に大事そうに抱えられている焼き芋の袋を覗き込んだ。
「焼き芋なんて久し振りだな」
「これを見ると、ああ、秋が来たわ。って思うわね」
そう言って、ハルヒはごそごそと袋からそれは立派な焼き芋を取り出すと包んでいた袋を俺に手渡す。
「うーん、美味しそう」
ずっしりとした焼き芋をハルヒが真ん中で割ると黄金色のほっくりとした見るからに甘そうな芋の表面が顔を出す。

「はいこれ。あんたの」
割った片割れをむんずと俺に差し出して自分はパクリと芋にかじり付く。
「うーん、甘くてほくほくしてる!」
はふはふと美味しい音を立てて、焼き芋様も食べられるのを喜ぶのではないだろうかという表情で皮を剥きながら一口、また一口と口へと運ぶ。

「キョンに奢ってもらうと美味しさも数割増しね」
蜜の入った黄金色にも負けず劣らずな笑みを顔に浮かべて、芋へかじり付く横顔と己の手に持った半分の焼き芋を眺めて自分の心の中の何かが、懐が寂しくなった残念な気持ちをこれまた随分と上回ることに気が付いて思わず口元が綻んでしまう。

焼き芋様々と言っていいのだろうか。

俺は隣にいるハルヒに気付かれる前に、口元の綻びを少しの努力で苦笑に変えて、美味しそうな湯気を立てている芋にかじり付いた。

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