スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

花見

世の中の学生はただいま絶賛春休み中である。
ハルヒがどっかの大企業に1人はいるであろう敏腕秘書のように毎日スケジュールを黒くしてくれるもんだから休みなのに全然休めていない。
が、今日は久しぶりの休日だ。朝から惰眠を貪っても文句はあるまい。
目覚まし時計の鳴らない朝。あ、いや昼か?もう何度寝になるのか数えるのも億劫になっていたとき俺の平和は無残に壊された。
そう、枕元に置いてある携帯電話が着信を告げる音楽を奏で始めたのだ。

ああ、なんか出なくても誰が掛けて来たのかが分かってしまうのは着信音を個人設定しているからではない。
勘だ、カン。勘は女性の方が鋭いとよく言うけれどハルヒに関しては俺に敵う者なんていないんじゃないか?
ってこんなこと全然胸を張って自慢できることではない。
そうこう考えているうちに4コールも過ぎてしまった。あーこりゃ第一声は

『このバカキョンー!!』

だった。やっぱりな。

『ちょっとあんた!まさかまだ寝てたの?』
「スマンがそのまさかだ」
俺は時計を見る。……まだ9時じゃねーか。まだ昼にもなっていなかったのか。
『何言ってんのよ、時間は有限なんだから有効に使わないと勿体ないでしょ』
いやあのだからな、俺は睡眠という行為に有限な時間を有効に使っているのだ。
『10時にいつもの駅前ね』
「っ、おい!ハルヒっ!」
俺がハルヒの名前を呼び終わる前に通話は一方的に切れた。
あの、今日は休みでしたよね。ハルヒさん?

ここで今の電話を、幻。気のせい。となかったことにして布団の中に逆戻りをしてもいいんだろうがそんなことをしたらハルヒに何をされるか考えるだけでも背筋が凍る。
やれやれ。なんでたまの休日にもこの言葉を言わなきゃいかんのだ。
1時間という短い時間に俺は出かける準備をして家を出た。

案の定いつもの待ち合わせ場所にはハルヒと思しき人影が。お、珍しく最後じゃない。これは初めての奢られ役か?なんてホクホクしながらハルヒの元へ着いた途端
「遅い!罰金!!」
と言い渡された。
「いや、あのな、まだ10時まで15分もあるぞ。それに他のメンバーが揃ってないじゃないか」
「だって今日はあたしとあんただけだもん」
「は?」
寝耳に水とはまさにこのこと。
しかも俺に奢らせるのがそんなに嬉しいのか、ハルヒはニヤリとして
「だから罰金。お昼奢りなさいよ」
だそうだ。ハイハイ。いつだってお前の腹は満腹だろうが俺の財布は空腹だよ。

ハルヒは呆けてる俺を引きずるようにして電車に乗り込んだ。
休日とは言っても休みなのは俺達学生だけであって世の中は通常営業している。
通勤ラッシュも一段落した車内の中でハルヒと俺は確保した席に座り、しばし質疑応答と言う名の会話をすることになった。
「おい、こんな朝っぱらから呼び出して何処に行くんだ?」
「んー、それは着いてのお楽しみ」
「なんだそれ。それにしても何で他のメンバーはいないんだよ」
「昨日の夜に電話したらみんな都合が悪いんだって。珍しいわよねえ、こんなことがあるなんて」
ふーん。っておい!なんで俺だけ当日の朝なんだよ。俺にも昨日の夜に連絡しろよ!!
「あら、だってキョンはいつだって暇でしょ?目覚ましも兼ねてあたしが直々に起こしてあげたのよ。感謝しなさい!」
感謝しなさいって、お前は俺の秘書か。果たして一体いつからスケジュールを握られたんだろう。俺はスケジュールを任せた覚えはこれっぽっちもないんだが。

そんなこんなしているうちに出発してから1時間位が過ぎた頃、目的の場所へ到着した。

さすがに俺もハルヒが何を目的にやってきたのかを理解した。
「花見か」
「そうよ!」
隣で笑顔を浮かべるハルヒに「やれやれ」と思う以前に「悪くない」と思うなんて言いたくないね。

しかしまあ、せっかく学校が休みだというのになんで山登りなんてしているんだろう。
「頂上に展望台があるの。そこまでお花見しながら歩くのよ!」
というハルヒの一言で頂上まで一気に連れて行ってくれるロープウェイを横目で眺めながらなだらかな坂を歩く。
歩き始めは桜を愛でる余裕もあったのだが起伏のある歩道を2キロも歩いた頃にはすっかり疲れてしまった。
今からでもいい、ロープウェイに乗せてくれ。桜だって上から眺められたいと思っているはずだ。

疲れ果てている俺とは逆に咲き誇る桜のトンネルをハルヒは嬉しそうに俺の先を行く。
これでも初めのうちは俺と話しながら並んで歩いていたんだぞ。

「こらー!キョン!早く来なさーい!」
表情が分かるくらいの距離でハルヒが俺に向かって手を振っている。
はいはい、今行きますよ。気分はおてんば姫に付き添うお供のキャラクターみたいだ。
「ハルヒよ、元気なのは構わないが俺は既にお疲れだ」
「んもう!だらしないわねえ」
「なんでお前はそんなに元気なんだよ」
「キョンは気合が足りないのよ、気合が」

ハルヒは腰に手をやって俺を眺める。そしてしばらく何か考えたあと俺に右手を差し出してきた。
「なんだ?」
「キョンがバテてるからあたしが手を引いてあげるのよ。ついでに気合も分けてあげるわ!」
感謝なさい!と語尾は荒いがなぜか100ワットの笑顔のハルヒ。
ああ、お言葉に甘えて引いてもらうとするさ。ついでに気合も分けていただこう。

爽やかな風が吹き桜の花びらが舞う中、俺はハルヒの手を取り歩き出す。
桜に囲まれて隣にハルヒがいる。心なしか口元がほころぶのはなぜだろう。

まあ、たまにはこんな休日もいいんじゃないかな。と思うのは桜のせいじゃないはずだ。

Utility

ABOUT

Author:R254
掌編のみのテキストサイト。
ノーマルと腐が同居。
開店休業中です。

CONTENTS

■INDEX
■涼宮ハルヒの憂鬱 ■サイトについて
■オフライン
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。