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雨宿り

 気持ちのいい五月晴れの午後、相変わらず方向性の定まらないSOS団の普段の活動。
 SOS団長こと涼宮ハルヒは団長席でパソコンのモニターを獲物を見つけたような肉食獣のような目をして覗き込んでいる。
 あ、こりゃあ何か見つけたな。そう俺が分析した瞬間、ハルヒは無駄な力を使い席を思い切り立つ。
「今日は悪いけど先に帰るわ!ちょっと気になる事があるのよ」
 思い立ったら吉日と言う言葉がすっぽりと当てはまるのではなかろうか、恐ろしい行動力でハルヒは「じゃ、また明日ね!」と台風のように部室を去っていった。

「今度は何を見つけたのかね。うちの団長さんは」
「涼宮さん、なにかまたコスチュームみたいなの見てましたけどお……」
 と朝比奈さんが困ったような顔をしてお茶のおかわりを淹れてくれる。
「あの方も好きですね。でもご自分はなさらないですよね」
「朝比奈さんをリアルの着せ替え人形だと思っているらしいよ。それとコスプレは1人でやってもつまらんのだと。ほれ」
 適温で淹れられたお茶をすすりながらチェスの駒を動かすと古泉はそれまで張り付かせていた笑顔を少し崩し「うーむ、そう来ましたか」と悩みだした。

 ハルヒが部室を去ってから10分が過ぎた頃、いつものようにあまり手ごたえを感じないゲームの決着が付いた。

「チェックメイト」
「参りました。やはりあなたには敵いませんね」
 本当に参ってるのかね、こいつは。逆に負けるのが快感になってないか?
「さすがの僕もそんな趣味は持ち合わせてませんよ。いやはや、一体いつになったらあなたに土をつけられるのでしょうか」
「おまえは先走りすぎるんだよ。攻める見極めが甘いというか」
「そうですかねえ、僕としてはこれでも随分我慢しているんですが。もう一勝負どうでしょう?」
「そうだな」
 チェスについて雑談をしつつ、次の勝負を始めるために駒を並べながらチラリと窓の外を見る。

「あ、雨だ」
 あんなに良かった天気がほんの少しの時間でこんなに崩れるとは。
 10分ほど前に部室を出て行ったハルヒの顔がチラリと脳裏に浮かぶ。

「あー、悪い。ちょっと用事を思い出した。俺、先に帰るわ」
「いえいえ、この続きはまた明日にしましょう」
 チェスの駒を片付け始めたところで古泉に「用事があるなら早く帰った方がいいですよ。1人でシュミレーションしますから片付けは気になさらずに」と裏表の無い笑顔で言われ、朝比奈さんにはカバンと部室にいつからか置いてある置き傘を「雨降ってるから気をつけて。また明日」と相変わらずのエンジェルスマイルと共に渡され追い出されるように部室を出た。
 去り際に見た長門の口が「雨宿り」と言ったように見えたのは気のせいか。

「あーこりゃ結構降ってるな」
 昇降口を出ると思ったより強い雨が俺を出迎える。
 さっきまで晴れていたのにこの天気の変わりようはなんなんだ。確か天気予報で今日は雨が降るなんて一言も言ってなかったと朝のテレビで見たお天気お姉さんの姿を思い出す。

 しばらく坂を下りた項、店の軒先で雨宿りをする北高の制服を着た女子生徒が俺の視界に入ってきた。
 髪の毛は肩にかかるくらい、頭には黄色のカチューシャに付いているリボンが揺れているその彼女は偉そうに腕を組んでしかめっ面な上にまるで親の敵のような目をして空を睨み付けている。
 普通は途方に暮れるとか他の雨宿りの仕方があるだろうに。なんだかあいつらしいなとおかしくなって思わず苦笑してしまう。

「さすがにおまえの眼力でも雨は止まないか」
「キョン!」
 俺に気が付いたハルヒはさっきまでのしかめっ面をどこかに吹き飛ばして100Wの笑顔で、とんでもない、しかしハルヒらしい事を言った。

「遅いじゃない」
「遅いじゃないって、おまえ。俺はたまたま通りかかったんだぞ」
 そう、たまたま用事を思い出して部活を切り上げてきたらハルヒが雨宿りをしていたんだぞ。
「ふーん、たまたま、ね」
 一瞬、疑うようなジトッとした目つきで見つめられたと思った瞬間、天気を変えるには睨み付けるよりも効果あるのではなかろうかと思うほどのひまわりのような笑顔になる。
「キョン。あんた、あたしを置き去りにして1人で帰ろうなんてもちろん思っていないわよね?」
 そう言い終わる前にはちゃっかり俺の隣に自分の場所を確保して「さっ、行くわよ」と嬉しそうに命令する。
「はいはい」
 まったく。一体これは誰が持ってきた傘なんだろうね。

 しばらく二人並んで歩いているとハルヒは「ピコン!」とマンガみたいなリアクションをして、にこにこと俺の顔を見て話しかけてきた。
「迎えに来るのが遅かったから罰金よ。いつもの喫茶店で何か奢りなさい」
 やれやれ。
 俺は迎えになんか来てないぞ。たまたま通りかかっただけなんだからな。
 なんて身勝手な団長なんだ、と思いつつも雨が降らなきゃハルヒと二人で一つの傘を使うなんて事は無かったからなと考えてしまう自分は一体なんなんだろうね。

 ま、ここは素直に5月の変わりやすい天気と柔らかい雨に感謝しておくべきだろう。
 そんな雨の帰り道。


あ、坂の途中に店なんかあったっけという突っ込みはナシでw

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