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あんたはあたしの応援団長

最近は体育祭が秋ではなく春に開催される学校が多くなってきている中、我が北高の体育祭は秋に開催される。
なぜか俺の後ろの席の涼宮ハルヒは体育祭のクラスの応援団長に抜擢されてしまい、ハルヒ本人もめずらしくノリノリでSOS団の活動をほったらかして放課後は応援の練習に出向いている毎日が続いている。

平和だ。

そう、平和なのだ。当たり前のように放課後根城にしている文芸部室に顔を出し、メイド姿が麗しい朝比奈さんの御手が入れてくださる美味しいお茶に、俺に白星を与え続けてくれる古泉とのボードゲーム、部室の隅で規則正しくページをめくる音を出し続ける長門。
他愛もない会話を交わし、このまったりとした平和な時間が味わえるってのは、やはりトラブルメーカーもといヘンテコ変態パワーの持ち主である団長様が不在って事だろう。
うん、いいぞ。実によろしい。出来ればこの先もずっと続くといいんだが。

平和を噛み締めつつ朝比奈さんの入れてくれた玉露をすすっていると、目の前で動作も軽やかにオセロの駒をひっくり返しながら古泉が何気ないがこの先に俺が自爆する会話を振ってきた。

「このところ、あなたがとても寂しそうにお見受けできますが」
は?
「寂しい、と言いますか、物足りないといった顔をされているのをこの1週間でよく拝見しますので」
「何言ってんだよ、おまえ。俺は逆にハルヒがいなくて清々してんの。だってこんな平和、あいつがいたらありえんだろう」
「そうでしょうか? 僕は一言も「涼宮さん」とは言ってませんが」
にこりと邪気のない笑顔をしてこいつが発した言葉は破壊力抜群であり、思わず俺は席を立って部室を出たのは別に照れ隠しというわけでもハルヒの所に行こうとしたわけでもなく、ただ、ただ……何だって言うんだよ。

勢いで部室を出てしまったがさてどうしよう。ああ、そうだ、折角だから応援練習を見に行ってみるか。って別にハルヒの事が気になるからでは断じてないからな。
自分で自分に突っ込みを入れながら廊下をクラスの方へ歩いていくと、前から見慣れた姿が歩いてくる。

ハルヒ?

左腕に付いている腕章は相変わらず「団長」のままで。授業中にいつも見ているにも関わらず何故かほっとするのは気のせいか。

「こんなところで何してんだ。応援の練習はどうしたんだ」
あんたこそ何やってるのよ、と突っ込まないでくれよ、と願いつつも当たり障りのない質問を投げる。
「ああ、今から部室にキョンの事呼びに行こうと思っていたのよ」
意表を付いた解答に思わず「は?」という間の抜けた返事しか出来ない俺にハルヒは畳み掛けるように話してくる。
「あんたが居ないと調子が出ないっていうか、あ、雑用が居ないと、って意味よ!」
ああそうかい、俺はどこまで行っても雑用なのか。
やれやれ、と思っていたところでハルヒがとんでもない事を指を突きつけて言ってきた。
「そうだわキョン! あんた応援団長の応援をしなさい!」
ちょ、こいつは一体何を言っているのだろう。応援団長の応援ってなんで俺がそんな事をしなくちゃいかんのだ。

「だってあんたはあたしの……、あたし専用の応援団長なんだから!」

「な! お、おまえ!!」
何を言い出すんだ、この応援団長様は!?
「応援団長って、他に団員はいるのか?」
「居ないに決まってるでしょ! いいから! あたしの応援に来るの。良いわね、来なさい!」
といってハルヒは俺のネクタイを勢い良く掴んで歩き出した。うぐぐ、く、苦しい! 放せ!
いかん、久しぶりにやられたらこんなに苦しいもんだったっけ? このままでは窒息してしまう!
くそっ、たまにはカウンターだ! しかし女子のセーラーにはネクタイがない。よし、ならばリボンだ!
俺が勢い良くハルヒのリボンを引っつかむのとハルヒが俺を引っ張るのが同時だった。
リボンが解けて、体制を崩した俺はそのままハルヒに覆い被さってしまった。なんとか腕で支えてハルヒを踏むつぶさなかったのは行幸だが、この体勢は不味い!

ハルヒは仰向けでまるで言葉を無くしてしまったかのように俺の方をじっと見つめており、今の状態を把握したのかハッとしてキッと表情を改め
「ど、どきなさいっ! キョンっ!」
といいつつ心なしか顔が赤いハルヒは……可愛い。
「ちょっと……どきなさいよ」
今々の勢いはどこへ行ってしまったのやら急にしおらしくなってしまった。
やべ、可愛い。一体どうしたら。
それになんだ。俺たちふたりの半径3メートルに妙な色がついているような気がするんだが……。気のせいだ。うん、そうだ気のせいに決まっている。だから俺が今しようとしていることも何かの間違いに決まっている。
これは何かの間違いだ。それか、いつかのあの妙ちきりんな夢に違いない。
心なしかハルヒの瞳が潤んで見えるのは錯覚だろう。うん、錯覚だ。
な、おかしいだろ? ハルヒがこんなに可愛いわけないじゃないか!
しかしおかしい、どうして俺の心臓は勝手に早鐘を打っているのだ? もう、こんな妙な夢からはとっとと醒めなければいけないだろう。だからな、ええい! これは夢だと言ってるだろう!

そうだ、冷静になれ自分。

いつぞやはどうやって夢から覚めた? 良く考えるんだ……
良く………
い、いかん……普段使い慣れていない脳味噌がきゅるきゅる音を立てている。…………いや、違うな。思い出さないようにしているだけなんだろ? そうなんだろ?
ええい、いい加減諦めろ。俺。
本当はずっと、ずっと、したかったことなんだろ? わかってるんだろ?
ああそうさ。認めたくなかったんだよ。
俺にとってハルヒは……
あぁ、もういいだろ? 気付いているんだろ? 往生際が悪いじゃねぇか。ほれ見ろ、ハルヒは既にその両瞼を閉じているじゃねぇか。
「ハルヒ……」俺はかすかに呟き自分の右手をハルヒの白い頬に寄せ、胸の上で組んでいる白く細いハルヒの両手に手を添える。
左手から感じるハルヒの鼓動と、右手から感じるハルヒの震えが、どうしようもなく俺の中のナニかを刺激する。
しかし、俺は自分の心臓が壊れてしまうんじゃないかと思うくらい暴走しているのに気を取られすぎた。

急に頭に重さを感じ、そのまま俺はハルヒに顔面ごと衝突──しようかというその瞬間、ハルヒが俺を突き飛ばしやがった。痛ぇなおい!
「なにぐずぐずやってんのよ、バカキョン! ほんっと甲斐性の無い男ね!」
なんだと? さっきまで頬をほんのり紅く染めていたくせに……。
「だって、あんたがぐずぐずしてるからよ!」
そう怒りモード全開でツカツカと俺の前まで歩いてき偉そうに仁王立ちをする。
「あんたなんかにちょっとでも……。あぁもう! その根性、あたしが叩き直してあげるわ! これから体育祭まで毎日毎日びっしびし、しごいてやるんだから!」
そして急にネクタイを引っ張られ、ハルヒの顔が目の前に広がる。そしてくちびるに柔らかくて暖かいものが押し付けられたのは一瞬の事で。

お、おい、これって。

「とりあえず今日はあんたにあたしの根性のひとっかけら分けてあげるわ」
プイッと横を向いたハルヒの頬はかすかに赤く染まってる。

あぁ、わかったよ。体育祭の当日には何倍にもして返してやるさ。

俺はまだ横を向いたままのハルヒの手を取り、暖色に染まる渡り廊下を歩き出した。


さなこ。さんと猪さんと私で夜中に突如始まったチャットで合作リレーの清書。

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